『弟は羊になった』
(The younger brother became the sheep)


1980年/8mm/カラー/スタンダード
1track・マグネトーキー・モノラル/上映時間:22分

<初公開>1981年 渋川西高等学校・視聴覚室

animation,photography,edit: Hiroshi Harada











高校2年生の時に個人製作した8mmアニメーション。
当時熱中していたフロイト、北欧を中心とするヨーロッパの伝説や呪術、
宇宙や時間・空間、夢のの問題、自然と都市・戦争の対比などを映像化してみた。
長回しや背景動画、特殊効果を多用した宇宙物語。

製作期間:9ヶ月、動画枚数:3千枚、製作費:14万円。

音楽はラヴェルの「ダフニスとクロエ」などを使用している。
意外に話題にされていないが、「ダフニスとクロエ」は、冒頭のフルートによる
アルペジオ音が素晴しいのだが、なぜか音が小さく、ほとんどの録音では
同時に演奏されるハープの音にかき消されてしまっている。
上京してから、全曲(合唱付)を含めて、何度かコンサートに
足を運んだが、会場の演奏でも同様であった。
当時、楽譜も調べてみたが、特に弱音にする指定は入ってなかったと記憶している。
今までフルートを際立たせたバージョンは、多くのレコードの中で
わずか2つしか確認できていない。(ただしこれは1980年代までの情報)

8mmフィルムは一貫して富士フィルムを使用している。
田舎でも入手しやすかったというのもあるが、
当時よく見ていた東映映画の色彩の影響もある。
もっともタイトル隅に「富士フィルム」の表示されなかったら
どこの会社のフィルムだか判らなかったが。

当時、地域の小型映画祭に参加した事があるが、
男性の年輩の人中心で、皆達者な作りであった。
東京で初めて、日本映像フェスティバル等で
入選した8mm作品を見た時は、あまりの完成度にびっくりした。
特に科学映画とドキュメンタリーは素人の域を超えていたし
文化や記録としても貴重なものだった。
日本はそういうものをきちんと保存する公のシステムがないのが残念である。
きちんと保存できていたら、素晴しい社会の財産になっていたはずである。



以下は当時のチラシに掲載した文章。

ヨーロッパの山間部。山と緑と青空に囲まれた一軒の小屋に4人の家族が暮らしていた。
姉弟は羊飼いで、昼には音楽を奏でる。弟は笛を吹くのが上手だった。
夜になれば天は宇宙を映し、巨大な月は時間によって大きさを変える。
祖父は木彫りの人形を作り、夜には母と娘がりんごの種で占いと儀式を行なう。
風呂は水を入れた動物皮に焼き石を入れる。

ある日、某国のパラドと名乗る男が一泊させてほしいと小屋を訪ねる。
パラドから繁栄する祖国の話を聞かされ、都に憧れていた弟は、家族を捨てて
パラドとともに旅立ってしまう。悲しむ母と娘。しかし祖父だけはすべてを
知っているかのように表情ひとつ変えなかった。
姉は大地の鏡(水)に弟を映し、夜にはREM睡眠の中で、弟の幻影を目撃する。
同時に無意識下の母の抑圧にも苛まれた。
夢の中では、羊に乗って空中浮遊したり、巨大な母の首が
威圧してくるという現象映像に襲われたりした。


数年後、弟は羊の姿になって帰ってきた。戦争に参加したその帰り、
神の手によって羊にされてしまったというのだ。
一方、姉は、パラドとの間に出来た子供を一人で育てていた。
2人は、人里離れた土地での生命の継承という問題、男女という性、
そして二度と戻らない時間、一度しかない人生について
静かに考えるのだった。


(c) 1980 Hiroshi Harada


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